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日本食店の海外進出を支援 官民で「質」確保 “本物”提供しブランド向上

 訪日中に日本食を堪能した外国人が帰国後も同じような食事を味わいたいという要求に応えようと海外進出を目指す日本食事業者・料理人が増えている。日本産食材の輸出拡大、外食産業の成長に寄与すると農林水産省も後押しに躍起だが、現地では誤った日本食を提供する店舗も多い。このまま手をこまねいていては日本食ブランドを高めるどころか、毀損(きそん)しかねない。危機感を抱いた農水省は日本食の「質」確保に向けた支援事業に乗り出した。

 ◆世界的ブームに乗る

 農水省の補助を受け、2018年度から支援の実行部隊を担っているのが、飲食店を中心に店舗の設計・施工などを手掛ける「VIDA Corporation(ヴィダ コーポレーション)」(東京都港区)だ。

 ヴィダが実施しているのは「日本人日本食料理人の海外展開支援事業」。セミナーや国内外研修を通じて海外展開に必要な現地の商習慣など実践的知識・経験を無料で習得できるプログラムで、19年度は8日の東京でのセミナーから始まる。

 第1段階の国内セミナーは全国主要都市8カ所で計10回開催し、約400人の受講者を見込む。8月中旬からの国内研修を経て、厳選された20人が9~12月、最終の海外研修に向かう。

 18年度は350人が受講し、20人が最終の海外研修に参加した。スタミナどんぶりチェーン「伝説のすた丼屋」などを運営するアントワークス(同中野区)の社員もロシアで実務を学んだ。

 同社は現在、米ロサンゼルス、シカゴ、テキサスですた丼を提供。8月にはシカゴにカレーとラーメンの店舗をそれぞれ開設する。さらに南米や東欧、ロシアへの進出も視野に入れる。

 ヴィダのプログラムへの参加はその布石だ。早川秀人社長は「モスクワに3度行ったが、日本食“もどき”はあっても本格的な店舗はない。市場として魅力がある」と指摘。その上で、海外展開に積極的な理由について「日本食のおいしさは世界が認めている。外食産業にとって日本市場は飽和状態であり、今は海外進出のチャンス。成功しないわけがない」と言い切る。

 懐石料理、すし、天ぷら、カレー、ラーメン-。現地で受け入れられると自信を持って帰ってきた海外研修組は少なくなく、20人のうち半数近くの日本食事業者・料理人が海外進出を考えている。

 海外初進出を目指すのが「金沢まいもん寿司」を全国展開するエムアンドケイ(金沢市)。ロシア研修に参加し情報を収集、和食が求められていることを肌で知り、20年度をめどにロシアやアメリカなどへの出店に挑む。愛知県犬山市で日本料理店を運営する関西は米国研修先のテキサス州ダラスの現地飲食事業者と共同事業を検討、今夏に米国を訪れ可能性を探る。北海道倶知安町でラーメン店を営む新良は台湾進出に向け現地パートナーと協議を進めている。

 ◆本物の味を広める

 海外進出支援に手応えを感じているヴィダの杉本大社長は「日本食目当てに訪日する外国人は多い。需要はあるので日本食事業者・料理人はもっと世界に目を向けてほしい」とエールを送る。というのも、日本食とうたいながら日本食材を全く使用せず、料理人の技術水準も低い現地資本の日本食店は少なくない。このままでは日本とは違う料理が広まるとの不安を覚えたからだ。だからこそ農水省の補助事業に応募し、日本食を提供する事業者や基礎知識・技術を習得した料理人の海外進出を積極的に支援している。

 訪日中に食べた本物の味を帰国後も現地で味わえる場を創出し、事業機会を世界に広げるとともに日本食ブランドの確立に貢献したいとの杉本氏の思いはこれにとどまらない。

 ヴィダは世界各地に日本食をメインとした商業施設を約50カ所建設する構想をもつ。杉本氏はその狙いを「一人一人が個別に『点』として集客に挑むのではなく、施設に日本食事業者を誘致し『面』として戦うため」と語る。

 念頭にあるのが、中国・福建省に開設した中城大洋百貨内の「ホンモノ ジャパン フード タウン」。ヴィダが内装デザイン・施工を担った施設で、すしや懐石料理、ラーメン、鉄板焼きなどの店舗が入り、日本食を武器に集客している。

 国内の食市場が縮小する中、世界的な日本食ブームを生かさない手はない。第2、第3のホンモノを創ろうと東奔西走、日本食事業者・料理人に海外進出を呼びかけている。